短 歌
山内先生ご夫妻の秘蔵の短歌集。
病床の智佐子先生に捧ぐ惟治先生の熱き情熱。
一言一句から真の夫婦愛が伝わってくる感動の作品。
智佐子先生の大事な「宝物」です。



不安を隠し明るく励ます義妹達、平気をよそおい努めて笑顔を見せる妻。
 妹らの 励ます声に 妻は笑み
          手術を受けんと エレベーターに消ゆ


手術の疲労と睡眠剤に深々と眠りに落ちている妻を見守りつつも、いつか自分も夢の中に。そしてはっと目が覚めると。
 退院と 告げる笑顔の 夢覚めぬ
        酸素吸入器 付けし妻あり


私の有らん限りの力で、必ず妻の病を治してみせると、心に誓いつつ。
 わが命 すべてを注がん 病む妻へ
             託す我が手に 祈り込めぬ


仕事を終え病室に来れば、点滴された抗癌剤による白血球の低下で、衰弱の深い眠りの中に。言葉を交わすこともなく、病室の夜は更けてゆく。
 手を強く 握りて癒える日 祈れども
             君は深き 夢むさぼりており
 終電の 音去りし後 病室に
             臥せる妻の 寝息残れり


平成2年3月8日、峡南三校生指連絡協議会・懇親会もうわの空、やっと終わる。待ちわびているであろうと案じつつ、病院に駆けつける。
 待ちわびる 妻を案じつ 急ぎ来れば
             鎮痛剤打ち 深く眠りぬ


病院を出る。午後十時半。星空はどこまでも冷たく澄みきっている。
 妻を看し 帰路の夜空 仰ぎ見つ
             祈りを捧ぐ 星を求めり

残業に、職員室の時は過ぎて、病院に行けないもどかしさとあきらめを抱き。
 入院せし 妻を案じつ ペンを置き
             病院の方(かた)の 天を仰げり


ベッドの脇で、明日の教材研究をしていても、気になる妻の容態。
 翌日の 教材研究 かたわらに
             病む妻の手の 脈拍をとり


変わる季節に全く無頓着であったが、このところ妻の容態も落ち着き、ふと病室の窓を見れば。
 病室の 窓辺に落ちる 一葉(いちよう)
             枯れ葉に秋の 訪れを知る


いつかゆっくり旅行しようと、いつも語り合っていた。
 いつの日か 病癒えて 二人旅
             京の嵯峨野か 奈良の斑鳩


『体力をつけなさい』主治医の口癖。しかし、なかなか進まない食事。何とかしなければ。
 病院の 食事進まぬ 臥す妻に
             何か求めん 街の夜更け


それぞれ厳しい環境に置かれていても、そのことが明日の大きな幸せの下地になると信じつつ。
 深雪の その下でこそ 春を待ち
             固き芽を持ち やがて開かん


やがて訪れる春を夢見つ、冬の北風に耐えながらエネルギーを蓄えることが大切であるという人生訓。
 緑萌ゆ 我が季(とき)来るを 幹に秘め
             吹雪に耐えよ 木々の梢


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